2009年12月24日木曜日

無実はさいなむ

無実はさいなむ
(アガサ・クリスティー/小笠原豊樹 訳)
ハヤカワ文庫
原題:Ordeal by Innocence

2年前にすべて終わったはずだった事件が一人の男の来訪によって覆され、疑心暗鬼に苦しめられる家族の姿が描かれる。ひとつ屋根の下の家族の表面と内側、一人一人の暗い心の内、周囲の関係者から見た家族の問題点、など多彩な角度からこの家族をとらえて人間の描写力が冴える。犯人はなかなか絞れない。夢中になって読めた。

ただ、終わり方があっけないと思った。読みながらもうあとこれだけしか残ってないのに終われるのかな、なんて心配したりした。解決後のエピローグをもっと増やして丁寧に人々を追ってほしかったな。特に一人のキャラクターについてだけど。もっとこの人に反省か悲しみか苦しみかもしくは慰めとか幸せとか与えるなどして、何かその人についてもうちょっとこの後の面倒見をしてほしかった。