2009年12月5日土曜日

牧師館の殺人


牧師館の殺人
(アガサ・クリスティー/田村隆一 訳)
ハヤカワ文庫
原題:The Murder at the Vicarage

マープルものの第一作目なのだそうだ。ミス・マープルは噂話の好きな田舎のおばあさんたちの中でもひときわ観察力が鋭いため、あまり好かれていない、というのは面白い。殺人事件なんか起こりそうもない村で誰からも嫌われていた頑固で独善的な正義漢の大佐が殺され、事件現場となった牧師館に住む牧師が事実上の探偵役として読者の目となる。

読み始めると面白くて一気に読み込める。実をいえば多くの謎はきれいな形できちんと最後に見せてくれるだろう、ってあまり細かい殺人の経過を考えもせずに読み進んでいった。牧師さんやミス・マープルまかせ。作者は練り上げるのに苦労してるだろうにね。それより等状する多くの人の個性がだんだんに際立っていくので、人物像や不可解な行動の意味を考えていくような読み方をしていた。結局思いもよらぬ真相にはちっとも近づけなかったんだけどね。