忘られぬ死
(アガサ・クリスティー/中村能三 訳)
ハヤカワ文庫
原題:Sparkling Cyanide
美しいローズマリーの突然の自殺、その場に居合わせた6人。夫、妹、夫の秘書、友人。事件から1年経ってもローズマリーの記憶は6人の心に幽霊のようにつきまとう。そして「本当に自殺だったのか?」という疑惑が新たな波紋を引き起こす。
スタートから既にいないローズマリーを中心に、それぞれの人のローズマリーに対する様々な感情とかお互いの人間関係とかが詳細に語られドラマ的にも素晴らしい。そしてそこまで皆の心の内をさらしながら事件の真実は容易は掴めない。1年前の出来事もそうだし、進行中のことも、次に起こることも。かなり好きなタイプの作品。真相の意外性もすごい。
ルシーラ伯母さんの数ページにもわたるおしゃべりはおかしかった。長いおしゃべりの隙間隙間に聞き手がただひとこと相づちを入れるというやり取りで、全体的に暗めのトーンのこの作品の中ではちょっと笑える面白いシーンだった。