(E・ブロンテ/小野寺健 訳)
光文社古典新訳文庫
事前にオーディオブックを聴いてあらすじを知ってたから読み切れたのかも(Wuthering Heights:Oxford Bookworms Stage5)。始めの方の荒れた場面に戸惑わされるから。嵐が丘という名の屋敷には家政婦一人以外にはまともな人間がだれもいないように見える。この部分を我慢して読んでいって、キャサリンたちの子供時代の語らいが始まるとやっと物語に入っていけるような気がする。
とはいえ、ただただ圧倒されて、成り行きを見守ることしか読者には許されていないような感じがする。登場する人々の誰の心にも近づけない。同情さえ拒絶しているような小説に思える。環境も、人嫌いで変わり者の紳士ロックウッドさんさえ人恋しくさせてしまう「何にもない」ところ。自然は豊かというよりは厳しい。物語世界はこの地を一歩も離れることはない。登場人物に腹をたてたり気圧されたりしながら、読み終わってとにかくホッとしたっていうのが正直な感想だったりして。
上巻の途中で一か所だけだけど「ヘアトン」とあるべきところが「リントン」てなってた。翻訳の間違いかそれとも原作か。それとは別にリントンって名が姓にも名前の方にも使われててややこしいね。