2010年2月2日火曜日

長い腕


長い腕
(川崎草志)
角川文庫
第21回横溝正史ミステリ大賞受賞作

最初が電車内の殺人、次が空港内での惨事、どう関わってるのかわからない事件が並べられてから舞台は主人公の勤務先に。つかみが抜群ですぐ夢中に。通して面白くて一気に読んだ。不気味さといい説得力といい事件の元々の深い根っこといい、非常に満足な逸品だった。本屋さんでオビ(「第1級のミステリーにのめりこむ快感!!」と書き文字で)にひかれて買った。

ゲーム制作の舞台裏も興味深い。ただ説明過多な割にわかりにくい所も多かったけど。それと事件の核心はよく伝わったけど実際の事件の具体的な部分がちょっとぼやけている感じがした。

主人公はあまり好きになれなかった。心の傷のために故郷を嫌うのは仕方ないにしてもどうも上から目線が鼻につくし、自由で身軽で何でもこなせるので、かなり大胆な行動をしていても「どうせうまくやっちゃうんでしょ」なんて見方になっちゃうのでハラハラするところがなくて一体感に欠けるのよね。

よく迷信とか縁起とか、どうして昔の人は理由で説得せずに縁起悪いからなんて一言で済ませるんだろうって常々思ってたんだけど、もしかすると悪意を避けるために説明はあえてしてないのでは?なーんて思わされた。